異世界の歩き方「お前の耳はロバの耳」7

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
↓クリックのご協力をお願いします↓
にほんブログ村 小説ブログ ライトノベルへ
にほんブログ村
コメント
コメント投稿

トラックバック
トラックバックURL
http://hamayaraworks.blog105.fc2.com/tb.php/110-b04e3e1a
「なあ」
「ん?」
 彼は、少し厨房へ戻った後、どこかへ向かっていった。何度も何度も、頭を下げながらこっちを見ていたのが印象的だ。
「意見するようでなんだが、ああいうのは好きじゃないな」
 口をへの字にして、唸るようにミリルが言う。
「そうか?」
「なんというか、卑怯ではないか。騙すなど。この世で許されぬなら、いっそあの世で……」
「……それ、本気で言ってるのか?」
「もちろんだ。美しくない生き方など……」
 ふうん。と思う。
 まあ、他人の感覚に口出しすべきではないのかもしれないが。江戸時代か? とでもいいたくなるような価値観ではあるな。
「えどじ……いやな。美しさなんか選んでたら命いくつあっても足りないだろ」
 彼女は、えどじ? と首を傾げた後。
「しかしな、身分違いの恋など本来許されることでは――それこそ、私と貴様なら大恩という仲だちがあったからこその例外的なもので」
「なんで俺とお前の話になるんだ?」
 別に、結婚するわけでもあるまいし。
 彼女は、呆れたような睨む様な――漫画的表現で言えば、ジト目でこちらを見てくる。なんだよ?
「俺は……あくまで俺の私見だぞ? ……それは、逃げだと思うんだよな」
 ミリルが、鼻を鳴らす。馬っぽいなお前。
 見れば、足元ではがりがりと地面を蹄で削っていた。馬っぽいなお前。
「逃げ?」
「ああ。ええとだな、例えば今回の場合は、彼女の親父さんだな」
「ふむ」
「あいつが心中したとして、彼から見れば大事な娘を、殺した犯人に自殺されるのと一緒なわけだ」
「そう……なるな」
 不満げにではあるが、頷く。
「それなら、彼は誰を憎めばいいんだ?」
 憎む、という言い方は良くないかもしれない。だがまあ、そういうことだ。
「それは……自分自身をだな……」
「あのなあ、親父さんだって、娘の幸せを願ってのことだと思うぞ。まあ、ちょっと考え方に問題はあるだろうけどさ」
 完全な悪なんてものは存在しないのであって、それは相手の側に立って考えれば正しいことに過ぎないのである。というね。まあ、自分がいざ闘うとなったら相手のことまで気にしている余裕はないだろうが。
 所詮、言ってしまえば他人事である。しかし、ゆえにこそわかること、見えてくることもあるのではないだろうか。
「まあ、潔く美しく死ぬより、泥臭く醜くても生き延びる方が大変だし……敢えて辛い方を選んだと思えば、そんなに卑怯でもないだろ?」
「敢えて、辛い方を、な」
 彼女が繰り返す。噛みしめるかのように。

NEXT ↓クリックのご協力をお願いします↓
にほんブログ村 小説ブログ ライトノベルへ
にほんブログ村
コメント
コメント投稿

トラックバック
トラックバックURL
http://hamayaraworks.blog105.fc2.com/tb.php/110-b04e3e1a
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。