異世界の歩き方「お前の耳はロバの耳」10

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 ひとしきりアシヌロスの青年――名を聞いていなかった――の話で盛り上がった後、日も暮れてすっかり真っ暗になった道を、オルクの持つ明りを頼りに進んでいく。
 今日、宿泊する予定だった宿場町は、地図上では既に通り過ぎているらしい。しかし、未だ民家の一つすら見えてこないと言う有様で、このままではまたしても野宿となりそうな展開であった。慣れてくると、地べたで眠るのも存外悪くないものである。
 ライトが揺れ、ちらと馬車の荷台が照らされる。
 ニコラは横たわり、目を閉じていた。どうやら眠っているようだ。あとで何らかの悪戯をしてやろう。
「――なあ、貴様」
 唐突に、ミリルが口を開く。
「話があるんだ」
「あ、そうだったな。忘れるところだった」
 正しくは忘れていたのだが。
「で、どうしたんだ?」
「うん……その、昼も言ったが、兄上達には聞かれたくなくて、その」
 なにやらもじもじしている。
 どうれ、と体を乗り出し、内緒話のため彼女の肩に首を乗せた。あ、これ楽でいいな。
「ひゃあっ」
「何その反応、かわいい」
 そんな声出せたんだな。と思いながらしみじみと言う。彼女は言外のニュアンスを読み取れなかったか、少々赤面した。
「で?」
「あ、ああ」
 ふう、と彼女が息を吐き、話を始める。
「私は今年、十五になる」
「うん」
「女で十五など、行き遅れもいいところだ。そうだろう?」
 え? と思う。
 すみません、ちょっと何言ってるか分からないですね、という感がある。ロリコンの恋愛観を聞いている気分だ。十八歳なんてババアだろと平然と言い放った知人を思い出す。コメントは差し控えさせていただく。
「行き遅れ、とは全然思えないけどな」
「ああ……日元ではそうなのか……」
 ほっとしたような、肩透かしを食らったような表情を作る。
「つーか、だったら俺は相当な行き遅れだな?」
「いや。男性は少々遅くともある話だ。兄上もそうだな」
 確かに家庭を持っているようには凡そ見えないな。
「私は今まで、多くの見合いをしてきた。いわば見合いの有段者だ」
 婚活のプロですねわかります。童貞のプロである俺と大して変わらないじゃないか。大体にして五十歩百歩である。なお、五十歩は俺である。と主張して行きたい。
「しかし、私に釣り合うような男はいなかった」
「ほう」
 まあかなり綺麗だし、そんなものなのだろう。お世辞にも顔面偏差値が高いとは言えない俺が、こうして対等に話せるのが不思議なくらいではある。
「……すまない。嘘をついた」
「え、どこから?」
「実際は断られてばかりなのだ」
「なんでまた」
「男勝りが、過ぎると」
 言われてみれば、わからないでもない。まあ、AKを振り回すような美少女だ。よく訓練されたオタクでもなければ、お近づきになろうと思うやつは大分減るかもしれないな。十分ありえそうだ。
「でも、私だって頑張ってるんだ! ちゃんと女の子らしい服を着るようにしてるし、髪型もスタイルも気を付けてる」
「そうだな。間違いなく美少女ではあるもんな」
「う、うん」
 照れたように頬を隠す。気を張らずに、自然体でもてると思うんだけどな。
「でだな。貴様が私の婿となると、命を懸けて守ってくれたと聞いた時、私はとても嬉しかった」
 そんなに追いつめられてたのか。婚期ってやつは……
「きさ……君は優しい、それに私を女の子として扱ってくれる唯一の男だ」
「照れるじゃないか」
「だから、な」
 言い淀む。やがて、決心したかのごとくゆっくり瞬き、
「私を貰ってくれ」

「……は?」
「私を貰ってくれ」
「いや、聞き取れなかったわけじゃないから!」
 なんでそんなに気軽に言えるんだ!? お中元貰ってくれ、的な感覚だったぞ今の!?
「やっぱり、嫌か?」
「嫌じゃない、けど」
 いやしかしな。おかしいだろそれ。
「大丈夫だ。君にとってはあの二人の方が大事だろうから、私は三番目で構わない」
 おかしいだろお前。
「そんなに簡単に決められるものじゃ……」
「いくらでも待つ」
「……」
「…………」
 ジョーク、じゃないよな?
 モテキなのか? これがモテキなのか? すごくないかおい。大丈夫なのか。全年齢向けの範疇に収まってるのか?
「旅は、やめないのだろう?」
「あ。ああ」
「私は列車に乗れない。そんな金もないし、無賃乗車には目立ちすぎる」
 本気のようである。何その行動力怖い。
「私は必ずこの」
 西を見る。断崖絶壁だ。
「山々を越え、帝国へ辿り着く。だから、きっとその時、もう一度……」
「……わかった」
 意志の強いこいつのことだ。どうせ説得したところで、何も変わりはしないだろう。
 ミリルは、いわば井の中の蛙だ。あまり男性を知らないからこそ、俺程度に本気になる。彼女にとって山越えの旅、そして帝国での見聞は大海となるはずだ。間違った認識を改めるためには、そうするしかあるまい。
「もし、お前がその時まで考えが変わらなかったら……一緒に旅をしよう」
 流石にその気がないのに、娶るという約束はできない。そりゃ可愛いけど、だからこそな。
「いいのかっ!?」
「山越えは多分、辛いぞ?」
「私は、あの二人より後に出会ったのだ。だからこうして気持ちを告げるのが、ずるいこととわかっている」
「……?」
 話が見えない。
「ずるをするからには、敢えて辛いことも受け止めねばな」
 ――あ。
 まさか、焚きつけたのは俺自身だったのか。
 気付いた時には、後の祭りであった。

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