「黒竜海峡冬景色」6

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 ぼう、と汽笛を唸らせ、船体前部の煙突から黒煙が噴き出す。岸壁で船を見上げる人々が、思い思いに手を振り始めた。
 誰にともなく手を振り返しつつ、視線を巡らせる。と、まず大柄なオルクを見つけ、
「おお、いたいた」
「ほう、どこじゃ?」
 顔を寄せてくるひめに、指をさして教えてやる。
 オルクは、もはやちぎれそうな勢いで腕をぶん回していた。
「何か叫んでるみたいだな」
 周囲の雑音に混じって聞こえない。
「……再び会おう、義弟よ。だそうだ」
「聞こえるのか」
 ああ、そういえば、目とか耳は、彼女の方が当然ながら優れているのだった。うっかり忘れてしまっていたが、説明しよう。彼女の地獄イヤーは地の果てのコインが落ちる音も聞き逃さない好感度差なのである。彼女の地獄アイは地の果てで落ちるコインの軌跡すら見落とさない。コイン好きだなお前。
 というか、もはやプロフィールが中二臭いを通り越して小二臭い。小二病だ。
「そうじゃ。お主、やけに仲が良かったが男友達が初めてできたのではないか?」
 目はオルクの方を見たまま、彼女が問う。
 え、何? 俺に友達がいなかったのがばれたのか?
「べ、べつに俺にだって友達くらい……」
「……いや、その」
「そりゃ、親友ってほどじゃないけど、たまに飯食ったりするくらいの友達なら」
「…………こちらに来てから、という意味じゃったのだが……」
「……」
 沈黙の応酬である。完全に墓穴を掘ってしまった。かねてより一級フラグ建築士として定評のある俺だが、一級墓穴掘削師にもなれそうである。なりたくはないが。
「………………すまぬ」
「いや、別に。その、どうってことないし」
「すまぬ。いや本当に、ごめん」
 背中をひめがさすってくれる。優しさが痛い。優しさが痛い。俺涙目。
「ほら、ほら。彼も泣くなと言うておる」
 多分あちらからは俺が別れの悲しみに涙しているように見えるだろうが、残念! 古傷のせいだよ!
 落涙しないため、天を仰ぐ。上を向こう、涙がこぼれないように。
 と、上げた視線の先。一段上のデッキに、同じポーズの……あれは、さっきの女性だ。
 船が、ひときわ長い汽笛を鳴らす。
 ゆっくりと、港が、人々が離れていく。
 しばしお別れ、である。

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