異世界の歩き方27

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 ギリシャ風をイメージしたのだろうが、まあ失敗に終わっていた。
 そんな感想を抱かせる風呂を上がり、階段を通り二階・三階と自室へ戻ろうとして、
「ん?」
 厨房らしき場所に、明りが灯っているのに気づく。
 牛乳でも貰おうかと足を向けた。
「よう、さくら」
「わ!? ……ああ。お客様」
 飛び上がって驚かれるとはさすがに思わなかった。
「どうされました」
「風呂上がりだから、牛乳でも貰おうかと……何してんの?」
「こ、これは!」
 慌てて隠すように腕を広げる。
 その腕の向こうに見えているのは、まあひどいものだった。
 泡立っている炊飯用鍋、割ろうとしてつぶしてしまったのだろう卵の付着した縁、黒焦げの魚と思しき物体エトセトラ。
 全自動卵割機導入を真剣に勧めたくなるような状況だ。
「今まで料理どうしてたの?」
「板前がいなくなったのは先週で、それから初のお客様があなたたちです」
「そうか……」
「ご安心を! 明日の朝までには劇的な上達を遂げる予定がありますので!」
「ねえよ」
 もはやこれは基礎レベルの問題である。このままでは明日の朝食は凡そ食べられたものではない、確実に。それはコーラを飲んだらげっぷをするくらい確実だ。
「手伝ってやる」
「え。お客様に手伝わせるわけには」
「いいから」
 ずんずんと厨房に入り、蛇口をひねった。

 炊飯用鍋で米をとぎ、炊く。
 冷蔵庫から取り出した鳥ももを、適当に包丁で切って、鍋に作った醤油や砂糖、日本酒を混ぜたたれに放り込んだ。
「へえ……男子厨房に入らず、とかいいますけど、アレって嘘だったんですね」
「ああ、あれはひどい嘘だな」
「どこかで料理を学ばれたんですか?」
「バイト……いや、ちょっと働いてたことはあるけど、殆ど独学だな」
「すごいですね」
「お前だって、ちゃんと練習すればできるさ」
 言って、先ほど通った屋台のおやじたちが、一様に彼女に励ましを懸けていたことを思い出す。
「屋台のおっさんたちに、いろいろ教えてもらえばいい。きっとある程度までなら教えてくれるだろう。働かせてもらうのも手だな」
「勉強になります」
 かき混ぜると、良い香りがした。たれを一口含むと、味も問題ない。
「勉強ついでに、なんですが」
「うん?」
「あなたは、塞孔式を済ませたんですよね。どうでした?」
 さいこうしき? 最高色彩公式塞孔式……ああ。
 ひめから聞いたことを思い出す。
 日元に伝わる成人の儀式、元服の儀とも呼ばれるもの。
 以前ひめに、なぜ子供だけ尻尾があるのかと質問したのだ。
 怪訝な顔をした彼女は「一五歳となれば成人と共に切り落とすからじゃ」と答えた。
 その儀式の名前が、塞孔式。袴の尻尾孔をふさぐ式であったからとされるそうだ。
「いや。まあ……さくらは何歳だっけ?」
「一五です」
 おや? と思う。彼女の腰を見れば、尻尾が巻かれている。
「逃げたんです、私。怖くて」
「怖くて」
 オウム返し。俺には分からないが、それはそれは怖いことであるのだろう。
「やらなきゃいけないことはわかってるんです。けどやっぱり怖いんです」
「俺からは何も言えないけどさ、してないとやっぱり、いつまでたっても子供に見られるわけだろ」
「はい」
「だったら、自分で決めればいいよ」
「……え」
 もといた世界では大人になりたてだが、こちらからするとそれなりに立派には見えるらしい。
 だからできるだけ同じ目線で、言う。
「君がしたいようにすればいい。尻尾を切ってなくたって、君は立派にここを守ってる」
 きょとんとした顔の彼女に
「だろ?」
「やっぱり変わってますね、あなたは」
 彼女は、にいっと笑った。

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