異世界の歩き方28

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「随分長風呂じゃったな」
 部屋に戻れば、ひめがベッドでごろごろ転がっていた。濡れた尻尾が少し細くなっている。
「ああ。一応明日の朝食の確認もしに行ってた」
「なんじゃった?」
 朝には少し重いかもしれないなあ、と思いながら自分の作ったものを挙げていく。
「ごはん、キュウリの浅漬け、大根の味噌汁、鳥もも炒め煮だ」
「ふむ。あやつ、ちゃんと料理ができたのじゃな」
「それはどうだろう……」
「む?」
 ひめが起き上がり、顔を手に近づける。
 慌てて腕を引こうとするが、がっちりと手首を掴まれた。
 そのまま手の匂いを、クンクン鼻を鳴らして嗅がれる。何のプレイだこれは。
「な、なんだどうした」
「お主……また誑かされておったか」
 呆れたような口調で、ひめが言う。
「え」
「お主が作ったのであろう? 妾の鼻を甘く見るでないわ」
 じっとこちらを見据える瞳には、曇りも揺らぎもない。確信されている。
 早々に観念する。
「わかったか」
 面白くない、と彼女が鼻を鳴らす。
「お主はこの間の鴉の時もそうじゃ。お人よしが過ぎるのではないか?」
「いや、まあせっかくだから美味しいものを食べてほしいじゃないか」
「ふん……あやつになぁ」
 それもなくはないけども。
「いやいや。お前にさ」
「あ。そ、そうか」
 嬉しそうである。現金だな。
「まあ、そうじゃな。そうじゃろうな。うむ」
 この笑顔が見れるなら、どんな努力だって安いものだ。そう感じられる程の価値がある。
「お手並み拝見じゃ」

 少しだけ酒に手をつけて――さくらからお礼に、と貰ってきた――電気を消し、ベッドに入る。
「おやすみ」
「うむ。おやすみ」
 背中越しに、ひめの息遣いまで感じられる距離だ。
 彼女は、体温が高めのようだった。
 意識しないようにすればするほど、彼女の香りが、寝息が目を冴えさせる。
 いつもは離れているからいいものの、これほどの距離ともなるとやはり理性を野性の鎮圧に動員する必要性が生じる。
 夜が更けていく。眠れない夜が。

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