異世界の歩き方33

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 その後は何ともひどいものだった。
 半時間ほど並び、ようやっと辿り着いた窓口では「ここは軍人窓口」と言われ、次に並んだ列では割り込み相手に押し合いへしあいの死闘を繰り広げ、何度も顔面を押されたせいで顔が歪むかと思った。ひめは小ささが逆に幸いしたか、するすると人ごみを通り抜けていたが。
 それだけの思いをして、ようやっと辿り着いた一般客用窓口ではしかし、北京行きの切符は売り切れだとそっけなく言われた。
 更に人ごみを逆流し、何とか駅舎から脱出するころには既に建物に入ってから3時間ほどが経っていた。
 しかも、収穫はなし。
「徒労じゃったな……」
 ひめが、慰めるように肩に手を置く。
「驚くほどな」
 溜息をつくしかないことが、少々情けなかった。
 まさかこんなにも早く、壁にぶつかることになろうとは。
 次の発券日は、来月初日になるらしい。
 まだ半月以上もある。
「しかし、どうするかね?」
「うむ……船でも使うか?」
「船か」
 この町は貿易都市だそうで、駅に来るまでにも何本もの運河を渡った。ちょうど向こうで言う小樽のような光景だ。
 なんでも皇国は治水に熱心な国家で、十数世紀前には国土を南北に縦断する運河を完成、以降は現在まで国中を環状に結ぶ大運河を建造しているらしい。
「だが船じゃとなあ。随分時間がかかるからのう」
「そうなのか」
 ごそごそと、ひめがポケット用世界地図(福岡で購入)を取り出し、指差す。
「南下して黄河に回り、西へ行って、また北上じゃからのう」
「ええと、この京杭大運河を北上して、その終点か」
「んむ。半月程度かかるな」
「……果てしないなそれは。まるであの空のようだ」
「なんでちょっといい話っぽくするのじゃ!」
「まあ俺の人間的、器の大きさの方が果てしないけれどな」
「お主との会話の底の見えなさも果てしないがのう……」
 腕を組む。しかし、それじゃ鉄道待つのと変わらんな……
「おい、あんたら」
 どこから声が聞こえるが、俺に特殊能力が備わったということはタイミング的にあり得ないだろう。
 あるとするならもっとこう、ひめのピンチで俺が怒りのあまり新たな能力を得るとかそういう方向で頼む。誰に頼んだのかは定かではないが。
「バスとかはないのか?」
「うむ。この国は道路網はしっかりしておらぬからのう……それは難しそうじゃな」
「となると、チケット屋とかで転売品を買うか」
「それが賢いかもしれんのう」
「……おい」
 またしても幻聴だ。だが俺は初対面で「あんたら」などという口をきく失礼なやつはたとえ幻聴でも許せないという素晴らしい礼節の心を持っているためそれを華麗にスルーする。
「だがなあ、さすがに……」
「聞けよっ!!」
 なんだようるさいな、と思いながら声のする方を見る。
 俺と同じくらいの歳だろうか。にやけた男が立っている。全くうだつの上がらない男だ。失礼だな俺、なんだと!? と俺の中で善意の俺と悪意の俺が戦いを始める。
 よし無視しよう。

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