異世界の歩き方38

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 ひどい話だった。
 彼女の語ったところを要約すればこうだ。
 清華皇国では、国民の八割を占める真人(つまり尻尾のない普通の人間)の民族優位を保つため、十数年ほど前に幾つかの法が作られたらしい。
 亜人男性への断種への報奨制度、それと対をなす亜人女性を真人男性が妊娠させた場合の莫大な年金支給、娶った際の報奨金、真人の亜人に対する暴行・強姦罪などの執行停止。
 民族の健全化を謳ったそれらの法の執行に伴い、亜人の人身売買が活発化したのだという。
 まあそれは、当然の話だろう。どんなに残酷に見えても、インセンティブがあれば市場は成立する。どんなに規制しても売春が行われるように、人間の欲望と言う強力なインセンティブにブレーキはかけられない。それが現実である。肯定するわけではないが、事実は認めなければならない。
 で、話は彼女へと戻る。
 そう、お察しの通り彼女も買われた身なのである。
「……ハードだな」
 呻く。
 ことは単なる夫婦喧嘩ではない。
 義憤に駆られぬでもない話である。が、しかし国が相手ではどうしようもない。俺には政治が分からぬが邪悪には人一倍敏感といえども、走れメロスのようにはいかない。
 俺に連れ出してくれと言ったのは、故郷まで戻るにも鉄道や船に乗る路銀はなく、一人で街道を歩けば官憲の手にかかってこちらへ連れ戻されるという事情らしい。
 逃げたくもなろうものだ。
「でも、一番……」
 凛が口ごもる。
「一番いやなのは、毎日」
「……」
「旦那さまが連れてきた男に犯され……犯されっ……!」
 目の前が真っ暗になったような気分だった。
 彼女の顔が苦痛にゆがみ、言葉を吐くのすら辛そうに胸を上下させる。その姿はまるで、呼吸困難を起こしたかのようだった。
 うっ、とえづく彼女の背をなでた。彼女は吐かないように、だろうか。口を押さえる。
 そして、言葉を吐き出す。
「毎日、毎日っ……」
 なぜ? 答えはすぐ出る。
 報奨金だ。子を宿さない彼女に苛立って、そんな手に出たのだろう。
 それは、毎晩そうしていれば嫌でもそのうちにご懐妊と相成るだろうが……やり方には、全くもって反吐が出ると言わざるを得ない。虫唾が全力疾走だ。
 俺に声をかけたのも、およそそのためであると考えて良いだろう。
「だから、連れ出してください! わたしを、ここから……!」
「……」
 確かに、そこまで言われてなお、放っておくというのはどうにも自分で納得できない。
 しかしだ……しかし。
「それは駄目だ」
 視線が心を抉るように突き刺さる。
「ああ駄目だぜ全然駄目だ」
「どうしてっ!?」
「あのな、これが赤の他人だったらただ逃げればいいかもしれないけどさ……」
 何か言おうとする彼女を手で制して、
「この場合は違うだろ。逃げるだけじゃ何の解決にもならない」
 彼女は一生、逃げて隠れ続けなくてはいけないことになる。それは、なんというか受け入れがたいことだと思う。なんら悪いことをしたわけではないのだ。
「なら、どうすればっ!?」
「対決だ」
 はっとした表情になる。
 奴隷は自分から奴隷をやめることができない。というのは聞いた話だ。虐げられた者には対決という発想がない。
「対決……」
 自分の手を見る彼女の肩をたたき、
「じゃあ、行くぞ」
「?」
「柴田氏を探しに」
「! ……はい!」

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