異世界の歩き方39

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
↓クリックのご協力をお願いします↓
にほんブログ村 小説ブログ ライトノベルへ
にほんブログ村
コメント
コメント投稿

トラックバック
トラックバックURL
http://hamayaraworks.blog105.fc2.com/tb.php/45-2c50d2ae
 居間に向かったが、彼はすでに目を覚ましていたらしく、そこはもぬけの殻となっていた。
 そのまま、うつむく彼女を連れてRPGの主人公よろしく縦列で彼を探し、何部屋かを捜したところだった。つうかでかいなこの家。などと思いながら向けた視線の先。
「あれ」
 扉からわずかに光が漏れている。
 ひめの部屋だ。
「起きたのかひめ。まだおはようの時間じゃないな。お遅う」
 などと下らないことを言いながらドアを開ける、と。
 ひめはまだ起きておらず、すうすうと可愛らしい寝息を立てていた。
 両の手首を縛られて。
「ありゃ、随分早かったな」
 ベッドに腰掛け、今まさにひめに触ろうとしていた柴田がこちらを見る。
「……これはどういうことだ? 説明と謝罪と賠償を要求しかねないぞ」
「落ち着け落ち着け。ギブアンドテイクだよギブアンドテイク。そいつで楽しんだろ?」
 柴田がうすら笑いを浮かべながら、視線を俺の後ろへとやった。
「いや。俺は凛には手を出してない。だからひめにも何もしないでくれると助かるんだが」
 可能な限り丁寧な口調で、本心を隠すように言う。本心は――ぶっ飛ばすぞお前、といったところか。
「何。本当か?」
 目は凛を向いたまま。
「はい」
「そうか。そりゃ仕方ないな」
 肩をすくめる。
「やっぱ緑の肌ってのが問題だな……役立たずめ」
 役立たずはないだろ。
「聞いてくれよ。真人仲間ならわかるだろう? 亜人なんて俺達に奉仕するしか価値がねえっつうのに、こいつは満足に役にも立ちはしない!」
 ファンタジーのかけらも感じられないセリフと、さも当然のことを言っているという表情の彼があまりにも不気味だった。
「花魄種ってのは、なんでも真人との子はできないらしい。私は人売りに一杯食わされたってわけだ」
「え」
 強烈な違和感を覚える。
 毎日彼女にしていた仕打ちは、金目当てではなかった?
「本当に、え。だよ。晴天の霹靂に辟易ってやつだな。しかし、あれだ。離婚などすれば結婚の報奨金は返還しなきゃならん」
「……」
 彼は饒舌だった。腸が煮えくりかえるような気持ちでそれを聞く。何か、ひめを馬鹿にされているような、そして彼女を馬鹿にされると自分のことまで嘲られているような気分になる。そして、凛へのその物言いは、全くもって平均的な日本人男性であるところの俺が義憤に駆られるには十分なものであった。
 端的に言えばものすごく不愉快な気分!
「だから、毎日真人の客人を招待し、妻を犯させることにしたんだ」
 背後で息を呑むような音がした。
「つながりが見えないんだが?」
 自分でも驚くほど低い声。
 そして、疑問は――違和感は、直後氷解する。可能な限り最悪の形で。
 彼の発した言葉は凡そ現実とは思えず、耳を――あるいは自分自身の精神状態を疑いたくなるようなものだった。
「いやつまり、凛を自殺させようと思ったんだよ」
 何でもないことのように言う。
 ああ。なるほど、と思った。
 なるほどこいつは、最低だ。自分もお世辞にも上等な人間ではないと自覚しているが、それにしたってこいつはひどい。こいつは臭い! げろ以下の臭いがぷんぷんするぜ……
「全く、客人の相手もできないほど魅力がないなんて、生きる価値もないよな」
「お前……こいつが気に入って買ったんじゃないのか?」
「いやあ、安かったから」
 ははは、と笑う。
「さて、あんたはゆっくり休んでくれ。あんたのものと一緒にでもな」
 ひめの髪を一撫でする。汚い手で触るな糞が。
「私はしっかり妻に躾をしなくちゃな」
 そうしてベッドから立ち上がった彼はゆっくり彼女へ近寄る。
 彼が丁度真横に来た時、俺はなんとなくコサックダンスの要領で足を突き出した。ふむ、不思議なこともあるものだ。
「のわ!?」
 バランスを崩した彼がすっ転ぶ。
 いやあ、まさかなんとなく出した足が柴田氏を転ばせてしまうとは、思いもよらなかったな。偶然とは全く奇妙なものだな。
 さあ、対決だ。と凛へ視線を送る。
 彼女は刹那、迷いを浮かべ、

 彼の頭上へ右脚を振りあげたのだった。

NEXT ↓クリックのご協力をお願いします↓
にほんブログ村 小説ブログ ライトノベルへ
にほんブログ村
コメント
コメント投稿

トラックバック
トラックバックURL
http://hamayaraworks.blog105.fc2.com/tb.php/45-2c50d2ae
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。