異世界の歩き方「セリカ・シンドローム」終

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 痛がる俺に、我に返ったらしくひめが渾身の大謝罪を敢行し、俺も迎え撃つべくこれに謝罪。かくして戦いの幕は閉じたのである。
 全く癖になりそうであったよ……あれ? と自分自身の可能性を感じつつ、再び北京市内へと戻る。
 なお、シャオが何やら御者台に座ってぎこちない笑顔の練習をしていたのには深く突っ込まないことにする。
 で。
 市場、である。骨董品やら貴金属やら、まあそういった類のものを売り買いする場所であるらしく、随分な人手と、それ以上に各所で繰り広げられる値引き交渉が夏の暑さに花を添えている。うむ、めっちゃ暑い。しかも何か独特のにおいがする。なにこれ。
 そんな環境下にありながらも、ひめは何やら元気にいろいろな店を覗き込んでいる。現在何件目かはわからない。お前は今までに食ったパンの枚数を覚えているのか? てなものである。
「……と」
 ふと、視界の端に輝きを捉え立ち止まる。
「む? どうした」
 急に俺が石化したため、ひめの肩が変な方向に一瞬引っ張られ、あわや脱臼のヒヤリ・ハット体験であった。
「あ、いや。その……あれだ。シャオと行っててくれ。向こうの門で落ち合おう」
 じゃ、と手を離して人込みをかき分ける。
 後ろで何やら抗議するが如き声が聞こえたが、軽くスルーする。なに、シャオがいれば心配はあるまいと、俺の冴えた考えである。
 そして、
「それ、見せてくれないか!?」
 喧噪に負けじと、店主へ叫んだのであった。

 紙袋に買い物を詰めて揚々と彼女の待つ門へと向かう。少々時間がかかったのはまあ、三両と店主が主張したのに対し、俺がひめから使用を許されたのは一両であったためである。なかなか奴も強情だった。が、結局は折れた。まあどうせぼったくりを目論んでいたのだろうが。
「悪い悪い、待ったか?」
「いや。妾もいろいろ見ていたでな……ん、買い物か」
 袋を目ざとく見つけ、ひめが首をかしげる。
「ふっふっふ。これを見ればそんな顔はしてられないぜ」
「な、何を買ったのじゃ……?」
 少し彼女が身構える。俺の友好的な笑みから不安を感じたようだ。解せぬ。
「これ。はいプレゼント」
 言いながら、ぱっ、ととりだして彼女へ手渡す。
「お、おお!」
 予言は無事成就され、彼女の表情はみるみる喜色に染まった。
「これ……お主。妾が、見ていたのを、お主が見ていたのか」
 喜びのあまり少々言葉が不自由になっている。
「いや。そこまで喜んでもらえると嬉しい」
 お小遣い一両使い切った甲斐はあるというものである。
「うむ。うむ、大事にする。ありがとう」
 ぎゅうと、それを彼女は胸に抱く。
 それは、手鏡だった。
 なんとなく、昨日のあの鏡と似ているものを感じ、店主に聞いたところ、どうもこれも紫禁城の出入り職人の作ったものらしい。その名に恥じぬ、といった感じで小さいながらも随分精巧な細工が施されている。
「まあ、あれっすね」
「ん、お。ああシャオ……どうした? なんか良いことでもあった?」
 満面の笑みである。多少不自然な感はあるが。
「いえ、うん……あれっすね……こう、うらやましいかな、と」
「それは良いことなのか?」
「わかんないっすね。よく」
 彼女は苦笑する。表情があると、やはり彼女は美人だった。
 ひめの、うふふえへへと笑いながら鏡を抱きしめているのを見て、呟くように。
「幸せそうっすよね、ひめさん」
「そうか。そりゃうれしいな」
「どうすりゃ、私には幸せが来るんすかね」
「さあ……わらえば良いと思うよ?」
 気休めがてら、そう言うと、彼女はにっこりと笑って。
「こうっすかね」
「うん。美人だ」
 素直に感想を言うと、彼女はなぜか少し淋しげに、苦笑いを浮かべるのであった。

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