異世界の歩き方「沈黙の客船」2

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 俺達に与えられた船室は、水面にほど近い大部屋だった。そこには他の乗客はない。
 この国の交通機関には、外国人が切符を変えないものも多く、そういったものは連日開店休業状態なのだそうだ。一握りの、賄賂などで外国人への販売免許を得た船や、国営の鉄道だけに客が集中する仕組みというわけだ。なるほど考えたな。
 この船はそんなわけで、本来客船ながら個室は全てぶち抜いて貨物船にしてしまったらしい。で、貧しい市民を乗せるために大部屋だけ残った。と。
 当然そんなことを俺が知っていたというわけではない。
 話してくれたのは、出港数分後からずっとここにいる、この船の船長たる河童の彩香さん一九歳(彩香三九歳ではない)だ。五歳のころから船員として働き、今では船主の信頼も厚くこの船を任されているとか。
「あんた、こんなにここにいて良いのか? 船長だろ」
「船長だから良いんだっつうの。トラブルでもねえとすることなんざねえよ」
 言い放ち、かっかっかと笑う。剛毅な女性だ。
 まあ、先ほどから酒瓶を片手にキュウリを齧っている彼女が操船すれば、それはそれでどうだろうという感はあるが。
「妾たちを乗せて、大丈夫なのか」
「あー、そいつは問題ねえ。西洋人なら話は変わるが、あんたらはこっちの人間に近いし、それに彼氏は真人だろ」
「か、か、かっ、からしなどではないわ!」
「まあ、俺はどちらかというとわさびって感じだからな」
「なんじゃと!?」
「ほらわさびっつうか、やっぱりわさびの特徴? みたいな。わさび様、的な?」
「鼻につく感じじゃ!」
 誰がうまいことを言えと。
「あんたらあれか、旅の芸人か何かか?」
「ばれたか」
「何を言うておる。違うぞ、ただの旅行者じゃ」
 ひめの冷静なつっこみである。
「そうかい。楽しそうでいいねえ」
 ぐい、とお猪口を空にする。数秒とおかずそれを再び満たして、
「これから京杭大運河を南下して、黄河を上っていくことになる。まあ半月程度だ」
 口を横に広げる。新月のような形になり、怖い。
「仲良くやろうや」
「ああ、よろしく」
「うむ、世話になる」
 水かきのある、鱗っぽい手と握手する。未知の感覚だな……

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