異世界の歩き方「でも麒麟さんはもっと好きです」1

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 唯一の生存者である少女は、眠り続けていた。
 船がゆるゆると川をさかのぼっていく。船員たちは、あれだけ喧しかったのが嘘のように皆一様に黙りこくって操船に励んでいた。
 ただ一人変わらないのは、彩香船長だけで、まあ肝の太い女だと思う次第だ。
 ひめは、近くを高速鉄道が通るたび、そわそわと尻尾を揺らしている。
 やがて岸辺に建物が見え始めるころには、夏も去り際となっていた。

「……そろそろ、あんたらともお別れだなぁ」
 しみじみと彩香が言う。右手には相変わらず酒瓶が握られ、口にはキュウリがくわえられている。
「情緒もくそもないな!?」
「ど、どうしたのじゃいきなり」
「いや……冷静に彩香を分析した結果だ」
「お主、妾はどうかと思うぞ」
 ひめが嫌に真剣そうな顔で言う。なんだよ。
「本当のことを伝える、というのは時として残酷なものじゃ」
「ええー……ひめちゃんそれは更に残酷じゃねえかい?」
 がり、とキュウリを齧り折る。
「まあひめの残酷力は九億六千五百万二十八は下らないからな」
「わかりづらいなっ!?」
「わかりやすく言うと三百六十五くらいかな」
「減っておる!?」
「四年に一回は三百六十六になる」
「それ閏年じゃっ!?」
 ひめが毎度ながら、的確なつっこみを的確なタイミングで放つ。
「俺達良いパートナーだよな」
「なっ!?」
 びし、と尻尾が顔面に当たった。もっふもっふなのでダメージはほとんどない。むしろ回復する。ホイミ程度の回復力である。癒し系だな。
 アリアハンでレベル四まで勇者を成長させるため、地獄のスライム殲滅戦を展開したことがまるで昨日のことのようだ。虐殺系だな!?
「お前さんがた本当に仲が良いねえ。嫉妬しちまうよ」
 嫉妬とか「中に誰もいませんよ」を彷彿とさせるからやめてほしい。nice boat.
「船長、こちらにいらっしゃいましたか」
 がちゃりとドアを開けて、木下医師が近寄ってくる。
「君ら、お手柄だ。彼女が目を覚ました」

 ぞろぞろとドラクエよろしく列を組んで進み医務室に入ると、少女が「何この人たちドラクエみたい」という目でこちらを見た。なんでドラクエのこと知ってるんだろう。
「ど、どうも。助けていただいてありがとうございます」
「この人が君を助けたんだ」
 木下医師が、こいつがやりましたとばかりに指を差す。
「俺がやりました」
 空気を読んで頭を下げると、彼女は首をかしげていた。
 冷静に見れば、随分美人である。通った鼻と長いまつげ、白い肌と真っ赤な唇。すらっとした四肢を持ち、頭の上には尖った長い角が二本生えている。髪は輝く白銀だ。
「いやあ。彼は素晴らしい技術を持っていてね。私では君を助けられんかったよ」
「そんな誉められると我慢できなくなるじゃないか」
「何が我慢できないんじゃ?」
「ひめ、早くトイレに行ってこいよ」
「妾が我慢できないことになっておる!?」
「……ま、まあとにかく、彼がええと、胸を圧迫したり」
「胸を圧迫……」
 彼女が自らのおっぱいをさする。我慢できなくなったのかな。
「口移しで風素を送ったり」
「口移しで……!」
 口を押さえ、うつむく。船酔いか。
「せ!」
 彼女が大きな声を出し、トイレの話を続けていた俺とひめが振り向く。
「せ?」
「せ、せ……責任を取ってください!」
「え」
 ひめが、固まった。

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