番外編「稲荷と麒麟の二人旅」5

 ガイドブックを眺める麒麟二手を引かれながら十数分ほど歩いて辿り着いた「占いの館」は、思っていた新興宗教的な怪しさは感じられず、どちらかと言えば伝統や古い文化を感じさせる趣きだった。
 周囲の家々と同じカーキ色の壁に、密な刺繍を施された布が何枚もかけられ、入口の前に、小さく看板が出ているだけというこじんまりとした店構えである。しかし、人気に偽りはないようで、入口の前には行列ができていた。
「ほう……なかなかじゃな」
「でしょう」
 なぜか得意げである。

 そして数十分経って、ようやっと占い師の前である。
 前の客が涙を流しながら礼をして出て行き、呼ばれて暖簾をくぐればそこにいたのはポニーのケンタウルスだった。他人のことは言えないとの自覚はあるが、随分小柄である。
「ようこそ」
 にしては、随分声が低い。
「ど、どうも」
「よろしくお願いします」
 ぺこ、と麒麟が頭を下げる。慌てて追随した。
「今日は……」
「ああ。妾は……」
 付き添いで、と言おうとすると、
「探し人だね?」
「え」
 まっすぐ、確かにこちらを見て言っていた。
「お二人とも、同じ人が気になっていると見える。それも、かなり強い思い入れがあるようだ」
「す、すごいです……」
 麒麟が無知を晒すように、驚嘆の声を上げる。
 しかし……いや? 入ったばかりの、初対面の相手だ。コールドリーディングではないだろうし、かといって、ホットリーディングという可能性も低い……なんだ、これ?
「そう警戒しないでほしいね。別に取って食おうと言うわけじゃない」
「あ、いや……その」
「まあ、聖職者のようだから、怪しむのも当然だけれどね」
「……」
 閉口する。
「そうだったんですか?」
 うるさい麒麟。
「そうじゃ……うむ。いや……それで、彼は、彼とは会えるのか?」
 どうも、本物らしい。思えば族長も、こんな感じの空気感を醸していた……あの人は綺麗だけど、怖いんだよな。
「会えるよ」
「本当か?」
「そう遠くないうちにはね」
 ほんの少し、ほっとする。
 所詮占い、だがそれでも気休め程度にはなった。のである。
「ありがとう」
「いや、礼には及ばない」
 彼女が軽く目を瞑って見せる。
「それで、本当に頼みごとがあったのはあなたの方だね?」
「は、はい!」
「おお、そうじゃ。お主何を……」
「恋愛相談か。どうしたら相手を手に入れられるのか、だね」
「な、なんじゃとっ! 妾も頼む!」
「ええー」
 麒麟が嫌そうな顔をする。こいつ……

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